相続の相談を受けていると、「とりあえず相続放棄すれば大丈夫ですよね」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、これは非常に危険な考え方です!
相続放棄は“魔法のリセットボタン”ではありません!!
準備不足のまま手続きを進めると、後から大きな負担やトラブルに巻き込まれることがあります。
そこで、相続放棄を検討する際に必ず知っておいてほしいポイントをまとめてみます!
1. 相続放棄の前に必ず確認すべきこと
☑ 亡くなった方が不動産を持っていないか(持分だけでも要注意)
☑ 借金の有無(信用情報機関への照会は“万全ではないが、手掛かりとして有効”)
☑ 滞納している税金や公共料金の有無
☑ 管理が必要な財産がないか
特に借金については、「信用情報を取れば全部わかる」と誤解されがちですが、実際にはそうではありません。
㊟ 登録されない借入先もある
㊟ 反映に時間差がある
㊟ そもそも載らない種類の債務もある
つまり、信用情報は“完璧なリスト”ではなく、あくまでヒントや手掛かりの一つに過ぎないということです。
それでも、何も調べないよりははるかに良く、相続放棄の判断材料として一定の価値があります。
2. 相続放棄を考えている間は「財産に触れない」が原則
相続放棄を検討している段階では、被相続人の財産に一切触れないことが原則です。
財産に手を付ける行為は、「相続を承認した」とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
相続放棄を考えている間は、どの財産にも触れないことが最も安全です。
3. 不動産がある相続放棄は特に危険
亡くなった方が不動産を所有していた場合、相続放棄は一気に難易度が上がります。
特に問題になるのが、
☑ 危険空き家に認定されている物件
☑ 老朽化して放置されている空き家 です。
私のもとにも、行政(市区町村)「空き家の所有者が相続放棄してしまった」「相続人が誰も対応してくれない」といった相談が増えています。
行政としても危険空き家を放置できないため、 相続人や関係者に問い合わせをせざるを得ません。
もう一つ注意点!
相続放棄をしても、あなた自身が同不動産に持分を持っている場合は、その不動産の“関与者”であることに変わりはありません。
そのため、危険空き家の対応や行政からの問い合わせについて、結局はあなたが対応しなければならない立場になってしまうことがあります。
4. 全員が相続放棄すると、社会的にはさらに厄介な問題が生じる
相続人全員が相続放棄をすると、その不動産は「相続人不存在」となります。
この状態になると、不動産の処分が極端に難しくなります。
〇 行政が管理・対応に苦慮する
〇 手続きが長期化し、社会的コストが増大する
〇 空き家問題がさらに深刻化する といった “社会側の問題” が発生します。
相続放棄した相続人は法的には関与しなくてよくなりますが、不動産だけが宙に浮き、行政が処理に困るという構造が生まれてしまうのが現行法の課題です。 この状態を本当に解決しようとすると、 相続財産清算人の選任や、所有者不明土地建物管理人の申立てなど、 “相続人不存在に代わる人”を選任して不動産の処分を進めていく必要があります。
しかし、ここでさらに大きな問題が生じます。
〇 申立てを誰が行うのか
〇 管理人の報酬や手続き費用を誰が負担するのか
〇 行政が負担する法的根拠は乏しい
〇 結果として自治体も身動きが取れないケースが多い ・・・という現実があるのです。
実際、私のもとにも 「相続人が全員放棄してしまい、行政としてもどうにもできない」 という自治体からの相談が増えています。
つまり、 相続放棄が進むほど “不動産だけが残り、誰も動けない” という状況が生まれやすい というのが、今の日本の制度の大きな問題点なのです。
5. 相続放棄は「最終手段」!!
相続放棄は、「とりあえずやっておけば安心」というものではありません。
むしろ、事前調査をしっかり行い、メリット・デメリットを理解した上で判断すべき“最終手段”です。
特に不動産が絡む相続は、放置すればするほど問題が大きくなり、後から関係者全員が苦しむことになります。
6. 最後にまとめ
☑ 相続放棄は安易に決めてはいけない
☑ 不動産の有無は必ず確認する
☑ 信用情報は“完璧ではないがヒントになる”
☑ 相続放棄を検討中は財産に触れないことが原則
☑ 行政からの空き家相談は実際に増えている
☑ あなた自身が同不動産に持分を持っていれば対応を求められる
☑ 全員が放棄すると不動産が宙に浮き、行政が処理に苦慮する
相続放棄は“逃げ道”ではなく、慎重に選ぶべき選択肢です。
本来はお元気なうちに準備しておくことが、後のトラブルを防ぐ一番の方法です。
とはいえ、ご家族で相続の話題を切り出すのは容易ではありません。 だからこそ、気になることや不安がある段階で、私たち専門家にご相談いただければと思っています。
状況に応じた最適な方法を一緒に考えていきますので、 どうか一人で抱え込まず、早めにご相談ください。
